2017年8月16日水曜日

ブログ開設メッセージ

なぜ駐在員家族は、置かれた土地で咲く花なのか。

まわりからみたら「いい生活しているひとたち」。。。。
5年のブラジル・サンパウロ生活から日本に戻ってきた私が、日本帰国後、肩透かしをくらったこと――「私の5年間のブラジル生活、誰も興味を持っていないんだ」。

「現地の日常生活、楽しかったこと、苦労したこと、そして日本では得られない新しい発見、素敵な出会い、家族が増えて、そして私自身が成長したこと…たくさんあったんだけどな」

サンパウロでの日々の生活は、日本では経験しないことばかりでした。「今日はデモがあり危険なので、外出しないように」、といった緊迫した瞬間、そして、日本でも少なからず話題になったW杯、リオ・オリンピックの熱気を肌で感じる貴重な体験。

日本に戻り、少々寂しい思いをしている私に追い打ちをかけるかのように、友人からの、想像もしない衝撃の言葉「5年間、いい生活してたんでしょ」。
彼女に悪気はまったくありませんでした。

そうか…もしかしたら、駐在員家族の海外生活はその一言で片づけられるんだ…と。


配偶者の赴任先の国では、言葉の壁を感じながら、生活全般のこと、子供の教育のこと、それを教えてくれる日本人のお友達づくりからはじまります。新天地で仕事に忙殺される配偶者に相談しづらい時もあります。新しい土地での生活にはひとつクリアすればまた次と、いくつものハードルが立ちはだかります。今の時代、外国で暮らすことなんてそんな大変なのかしら?と思いますよね。駐在員自身もですが、その家族も、辞令がでてから赴任するまでの時期が短く、新生活の準備にあてられる時間が非常に限られているのです。その点が、自らの意志で行くと決めた異国で、勉学に励んだり、生活を営んでいくのとの大きな違いです。


本当の実態は?
そもそも、駐在員家族が「高層マンションから飛び降りたいと思った」とか、「家族とも遠く離れ、気の許せる友達がだれもできずに、家にひきこもって泣いてばかり」。しまいには、精神不安な状態が続き、それを見かねた配偶者からは「もう日本に帰りなよ」との言葉。さらには離婚寸前までいく家庭。実際に経験した当事者同士では、嵐が過ぎ去った後に「私もそんなことあったわよ」とこっそり告白しあう機会はあっても、誰も日本に帰ってきて、楽しく歓迎された席でそんなことは言いません。そして、言いたくないのです。「もしかしたら自分は、何らかの能力が低いがために新しい環境に適応できなかったのではないか」という後ろめたい、そして恥のようなものを感じているから。

花を咲かせるためには
では、どうしたら、駐在員家族が、異国で充実した生活を送ることができるのか。私は、帰国後、サンパウロで知り合い、すでに帰国した友人・知人や、外国と日本を何度も往復している諸先輩方のお話を聞いてぼんやりとみえてきたことがありました。
それは、異国の地で「自分自身の根」をどう張るか。駐在員本人は、会社から派遣され、日本から離れた地で任務につきます。帰属する組織をもっているのです。一方家族は、「帯同家族」と呼ばれるように、駐在員にぶらさがるような形で一緒にその土地で生活をするのです。もちろん、「そんなおまけのような人生、私は嫌」、もしくは、「子供の教育のために別居を選ぶ」という選択もあると思いますが、ここでは、一緒に行くと決めた場合に話の焦点をあてたいと思います。「根」とは一体なにか。それは、日本人駐在員コミュニティに貢献する「根」でもいい。もっと広く現地のコミュニティに向けたものでも、もしくは、日本と直接つながること、あるいは、自分と同じような境遇で他の異国で生活する女性たちを巻き込むことでも。なにか、自分で、ゆるぎない根を張っていけるかどうかが、慣れない異国で楽しく充実した日々を過ごせるかどうかの境目なのではないか…と。

私の「根」は?
私自身をふりかえると2つの「根」がありました。1つは、現地で息子を出産したこと。もう1つは、現地の大学(MBA)に通ったことです。1つ目の現地で出産したことで、息子はブラジル国籍を得ましたし、その結果、私と配偶者は、「ブラジル国籍をもつ子供の親」になったのです。「駐在外国人」というステータスから一気に変わりました。それは書類上のことですが、実際には、ブラジルの医療システム、新しい生命を迎える姿勢や、子供に対する考え方、お祝い事のならわしに触れ、自分自身も大きなおなかをかかえながら、笑いあり、涙あり、歯がゆい経験もしながら、忘れがたい一大イベントになりました。子供ができてからは、ブラジル社会の子供に対する寛容さを肌で感じ、日常生活でも恩恵を享受する側になったことで、ブラジルに対する印象ががらりと変わりました。
もう1つの「根」は、現地の大学(MBA)に通ったこと。駐在員家族として日常の生活で接触のある現地の方とは、少し違う人たち、どちらかというと、駐在員自身が仕事で付き合うような同性代とクラスメートとして共に学ぶ機会は、生活にはりを与えてくれるものでした。彼らは、欧米に本社をおく外国企業や、世界的に有名なブラジル企業に勤務し、南米内を行き来するような多忙なビジネスマン。もしくは、一家でビジネスを展開しておりそれを継ぐ若い経営者候補など。ブラジルでは人種差別は感じませんが、社会階級の差を感じることは多いです。彼らの階級特有の社交術やマナーはとても興味深く、ちらりと観察していたことは、微笑ましい思い出です。彼らと共に学び、成長できたことはとても貴重な経験でした。ひとりひとりの個性が際立ち、自分の意見を相手が納得するような根拠とともに、論理づけて発言する力、その意見が正解かどうかは、あまり関係がなく、とにかく、皆が賛成しようが、しまいが、自分の意見はきちんと主張する。それはあきらかにトンチンカンと感じる意見にも、教授は、すべての主張に肯定的な部分をみつけてくれました。その背景には、エリートから貧しき人まで、どの階層のブラジル人がもつゆるぎない「自己肯定力」があり、今後、私が見習いたい要素だと感じています。特に同じ女性のクラスメートからは大きな刺激を受けました。高い教育を受けて育った彼女らは、ほとんど性差別なく、女性は子供を産んでも、仕事にまい進する環境があります。子どもの世話や教育を任せられる乳母がいくらでもいて、3歳以下の小さな子供を預かる施設も非常に多いという社会環境が女性の活躍を支えています。

2つも「根」をもてたのに、いったい何が不満だったの?
私の場合、この2つの「根」に出会えたのは、ブラジルで生活を始めてからほぼ2年が経ち、3年目に入ろうとする時にいきなり同時にやってきました。要は、見つけるのに、2年弱かかったのです。その間、居場所を見つけらない苦しさ、心の奥底で孤独を感じ、暗い日々を過ごしました。もちろん、心の中ではそんな葛藤がありましたが、みな、異国で生活する者同士、ブラジルは暖かい気候も影響してか、周りの方々はみな本当に優しく、悩める時は、家族のように親身になり、助けてくださいました。
今でもこうして、その時にご縁のある方とお会いしたりさせていただける機会があるほどに、人生の先輩としてずっとお慕いしたいと思う方々との貴重な出会いがあったことは、とても大きかったと思います。


「自分自身の根」を見つけて張っていくこと
とはいっても、自分自身のゆるぎない「根」を持っているのとそうでないのでは、日々の生活の満足度や、安定感は変わってきます。「自分自身の根」はあなただけの根。だから自分自身で探しだし、丹精込め手入れをし、力強く地中に張っていくことが必要なのではないか…と。

ただし、現地では、自力で得られる情報にも限りがあります。「どうやってではなく、そもそも一体なにから始めていけばいいのか分からない」、「一人では始められない」…等、実際に生活をした身だからこそ、そのはがゆさは理解しています。

私は、日本に戻りましたので、今はもう海外駐在員家族ではありません。ただ、日本人駐在員家族(彼女)たちの素晴らしいポテンシャルとそして焦燥感を知るからこそ、このプロジェクトを立ち上げました。

まずは、ブラジル地域に限定したプロジェクトをスタートさせます。その後、ブラジルOGがさらに第三国に飛び立ち、また新しい土地で奮闘している仲間たちともプロジェクトを推し進めます。
今まさに、置かれた土地で咲きたい!と根をはる準備をしている方で、日本サイドからのサポートや後押しが必要、という方がいらっしゃいましたら、できる限りお力にならせていただきたいと考えています。どうぞお気軽に、当ブログを通じて、ご相談ください。

「いのちとは一人一人に与えられた時間」。時間という砂は、いつも同じスピードで落ちているはず。日本にいても、外国にいても、それが好きになれない土地であっても…


2017年夏 東京 ブログ開設によせて
シームレスウーマンプロジェクト
代表  宮本稔子

2 件のコメント:

  1. 「自分自身の根」が駐在前にあった人は特に新天地で突然自分の根がなくなる環境にすごく不安になるのではと思ったりします。この不安感は、駐在だけでなく、出産等で環境が変わる時とよく似ているようにも思います。いかにスムースに自分の根を見つけるか、どうやって自分の道を切り開いていくかは自分次第とも思うけど、こうしてブログを通して情報を共有してもらえると、とても参考になるし多くの人の励みになると思います!!

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  2. コメントありがとうございます。個別に事例をシェアすることで救われることがあると感じているので、インタビュー記事では、環境の変化にもまけず自分の道をみつけ、頑張っていらっしゃるいろんなタイプの方をとりあげたいと思ってます。ぜひ、ご意見また聞かせてください!

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